少しでも「」から脱するために、実際に作ろうとしているアンテナから離れて、基本的なアンテナに立ち返って自由空間で基本的なシミュレーションをしてみる。(6m DPが題材)

DPの基本まずこれは、MMANA-GALをいじるまえに、ダイポールアンテナの励振の状態を再確認。
上から順番に、基本波・2倍・3倍・4倍高調波が乗った場合の電流分布の図。

あとでやるけど、奇数倍ではエレメントの中心に電流の最大点が、偶数倍では電流の最小点が位置する。

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まずは、ダイポールに基本波を乗せてみる。
DPの図、基本波
まさに絵の通り。

これの同調点付近の特性。
DP狭帯域
ちゃんと、72Ωになっているな。

もっと広い範囲で見てみるとこうなる。
DP広域1
赤で1と書いたのが、1倍という意味。緑の矢印は、jXが0を横切る点での方向を書いたもの。つまりここでは、周波数を上げていくと、jXがマイナスからプラス方向へ動く。
そしてIと緑で書いてあるのが、電流励振になっている=給電点で電流最大になっているという意味。

さらにもっと、どんどん周波数を上げてみる。
DP広域2
するとこのように、2倍のところは電圧励振=インピーダンスが高いというのがわかる。3倍のところはちょっと波形に乱れはあるけれど、ここも1倍と同じ電流励振だ。

さらに上を見ると、
DP広域3
もっと。
DP広域4
全く同様にして、偶数倍のところは電圧励振、奇数倍のところは電流励振になっていることがわかる。
つまり、最初の絵のとおりのことがこの図からもわかる。だから、普通の給電方法(電流を流す)でダイポールアンテナに高調波を乗せると、奇数倍の波だけが乗るということがはっきりとわかるな。

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次に、フォールデッド・ダイポールを考える。これだ。
FD図、基本波
ただ基本波を乗せてみたところ。

これの同調点付近の特性。
FD狭帯域
280Ωになっている。

広帯域でみてみると、
FD広域1
さっきのダイポールのつもりで見てみると、全然違っていておもしろいでしょ!このように、基本波の1/2(よりもだいぶ下だが。)あたりのところに共振点がある。

ところで、ちょっと離れて、フォールデッドダイポールの線の数を3本にしたらどうか?というのをやってみる。こんな感じで基本波が乗ることになる。
3本FD基本波
外側2本と、内側1本で、電流の量が違ってしまっていて、3人寄ると文殊・・・じゃなくて、一人だけ仲間はずれ・・・というお子様チックな社会?なことがわかる。

これの同調点付近の特性
3本FD狭帯域
なんと、ほとんど0Ωになってしまった。「メンバーの士気が上がらないと、成果が出ない」という、マネジメント論を髣髴とさせる結果がアンテナのシミュレーションで見られるとは!。

これの広帯域の様子はこうなっている。
3本FD広域1
定量的には違うけれど、定性的周波数応答という観点では普通のフォールデッドダイポールと同様だ。

なので、その2者を代表して、この3本の方の特性をさらに上の周波数まで見てみる。
3本FD広域2
つまり、この両方のフォールデッドダイポールに関しては、基本波の整数倍で電流励振が可能であることがわかる。

さていよいよ、一番気になる基本波の1/2のところの様子を見てみると・・・
FD図、1/2
パン○ですか??www 
まあ、どうでもいいけど~ 
つまり、フォールデッドダイポールの全体を1つのループと捉えた場合にそれを1周するモードがこれの基本励振モードになっているみたい。ところが、そのモードでは、ご覧のとおり電流の最大点と最小点が隣り合ってしまうという自己矛盾になるうえ、さらには給電点そのものは電圧励振になってしまうので、なおさらマズいことになっていることがわかる。
だからこそ、最初のダイポールの場合の電圧励振の場合のように jX=0 でただ R が max という素直な形でなく、jX, R ともに鋭いピークを形成するというものすごく不自然かつ不安定な形になっているのだろう。こうやってみると、「あんてなくんがなやんでいる」ようすが手に取るようにわかるではないか。

ちなみに、フォールデッドダイポール(3本のも含む)に2倍高調波がちゃんと乗っている様子がこちら。
3本FD2倍
まあこのように、まさにループを形成した状態で波が乗っているというのがよくわかるな。さらには3本にしてしまうと必ず仲間はずれが1本できてよくないというのもわかる。なにしろ、共振原理はループだから、3本目のエレメントの出番があるわけがないみたいな。

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結局、当たり前ながら、jX=0 の周辺の R, jX がともにできるだけ平坦地で、かつ R=50Ω に近い点を探すというのが目的なわけで、それを実現するのは結構大変なことがよくわかるな。

さすがは、ベクトルも見られるシミュレータ。スカラーネットワークアナライザよりもベクトルネットワークアナライザの方が10倍くらいもお値段が高い理由も、こちらでも個人的に、既にSWRメータを持ってるのにわざわざアンテナアナライザをアメリカからポチってきた理由もわかろうというものだよね~。

ただ、「大変なことがわかる」というだけで、「それを解決する」には程遠いというのも事実なわけだけど。